特集 2024.12.23

「カカ女将（かかおかみ）と呼んでください」～吉田りえさん～

　彦根市芹橋の足軽組屋敷にあるデトックスカフェ「ハレとケと。」を営む吉田りえさん。彦根ではまだ珍しい、生のカカオを低温調理するローチョコレートを工房で手作りし、販売している。オープンから７年、この11月に法人化も成し遂げた吉田さんに、「ハレとケと。」のこれからについて聞いた。

「ハレとケと。」店主の吉田りえさん

—庭も素晴らしい。この建物は築何年ですか？

吉田　180年前の絵図にも載っていたので、少なくとも180年以上はたっているはずです。いろいろ物件は見ていたのですが、これだというところがなく…。その頃、ちょうど友達の友達がここに賃貸で住んでいて、その人がもう出るからと見せてもらったんです。最初は工房だけのつもりだったのですが、広いスペ−スはあるし、庭もあるし、活用しない手はないと思ってカフェもしようかしらと考えました。

ーチョコレ−トの工房ですか？

吉田　そうです。ロ−チョコレ−ト、生のカカオを低温調理して作ったチョコレ−トです。ビタミンとか酵素とか熱に弱い栄養素がギュッと詰まっているチョコレ−トですね。

−ロ−チョコレ−トと出合ったのは看護師をしているときですか？

吉田　そういう仕事をしていると、常々健康って大切だなと思っていて、自然食を勉強する中でロ−チョコレ−トの存在を知りました。知っているだけで食べたこともなかったんですが、なぜかずっと気になっていて、ロ−チョコレ−トの店をチェックしていたら、ワ−クショップが開催されることを知り、2013年に初めて食べました。そうしたら、何かすごく心が満たされるというか、充足感がありました。食べ物でこういう感覚になったのは初めてだったので、「何かすごいぞ」と感じました。

−普通のチョコレ−トとは味も違うのですか？

吉田　ロ−チョコレ−トは、そもそも体にいいものを突き詰めて作られたものなので、お菓子のチョコレ−トとは素材が違いますし、味は二の次です。本来、カカオが濃くて、甘くないものの方がいい。ただ、店でも「どれが一番甘いチョコレ−トですか？」と聞かれることも多いので、多少甘いものも用意しています。

「ハレの日」にも「ケの日」にもあうチョコレ−ト、「ケの日」を「ハレの日」にするチョコレ−トを作りたいと思っているので、ビジュアルにもこだわっています。この秋から化粧箱を新しいものにしたのですが、マ−メイドロイヤルバイオレット色の箱に、特殊な箔（はく）のロゴできらめくんですよ。

−カカオは仕入れが大変そうですが…。

吉田　本当に偶然だったのですが、たまたま行ったマ−ケットでカカオを売っている人がいて、その人に話しかけたら私の知り合いのチョコレ−ト業界の方や私のチョコレ−トの先生みたいな方も買っているところでした。その方はお子さまがアトピ−で、療養のためにタスマニア島に移住したんです。そこで健康にいい蜂蜜とかいろいろなものに出合って、そこからカカオも取り扱い始めたそうです。うちでは、エクアドル産のアリバっという希少品種のカカオを使っています。

−看護師からチョコレ−トの世界とはすごい転機でしたね。

吉田　もともと海外旅行が好きでよく行っていたのですが、たまたま訪れたバリが気に入り、移住しようとまで考えていたんです。でも結局ポシャって、日本に帰ってきたときに、もう一度看護師をやるのもちょっと違うなと思って。せっかく日本で生きていくなら、日本にしかないような場所で、日本でしかできないようなことをしてやろうと。なにか爪痕を残したいみたいな、そんな気持ちがありました。

−「ハレとケと」を今後、どんな場所にしていきたいですか？

吉田　エルサレムにしたいと思っているんですよ（笑）。お伊勢参りみたいな、人生一度は行っておかないとというような場所にしたいです。最近、イスラエルの人がよく来てくれています。昨年からランチをはじめたのですが、植物性のものだけで作っているカレ−がメインなので、ビ−ガンや宗教的なことで食べられないものがある人たちが探して来てくれているようです。

店を始めた頃は、「ロ−チョコレ−トを広めるぞ」「自分で作った商品を売るぞ」という感じだったのですが、（最近では）この空間を楽しんでくれる人が来てくれればいいなと思っています。最近では観光客の方がフラッと立ち寄ってくれたり、史跡巡りのついでに夫婦で寄ってくれたり…。

ここを訪ねてくれる人みんなを楽しませて、おもてなししたいんです。自称、「カカ女将（かかおかみ）」。楽しませるというか、私、こんなことやってます。楽しいんです。良ければ一緒に楽しみませんか。「Shall we dance？」という感じですね。