傷みが激しい状態になっている「鐘楼のヨシぶき屋根」の改修に向けて、延寿寺(彦根市稲里町)が現在、クラウドファンディングで協力を呼びかけている。
延寿寺は奈良時代の749年開山の天台宗の寺院で、安土桃山時代に織田信長の兵火によって消失。江戸時代の1657年に永源寺から和尚を迎えて臨済宗の名刹(めいさつ)として再興した。鐘楼も、その頃に建てられ、20年から30年に一度のペースでヨシ屋根部分をふき替えている。最近では1999(平成11)年に修繕された。
しかし数年前の台風で鐘楼近くにあった多数の樹木が倒れ、風雨の影響を受けるようになったことから、ヨシぶき屋根の傷みが目立つようになってきた。このまま放置すると雨漏れの恐れがあるほか、ヨシの間からは雑木が生え始めて景観にも影響が出てきた。
鐘楼の改修に向けて檀家(だんか)らが総会を開き、話し合いの中では「瓦やトタンの屋根に変更しては」との意見もあったが、最終的には「昔ながらの古い建物を継承することは大変意義深いこと」という結論に至り、ヨシぶき屋根を残すことになった。
これまでは檀家の負担でふき替えてきたが、檀家の減少や高齢化で改修費用の捻出が厳しくなっているほか、ふき替え作業を担う職人の減少で費用も高騰しているという。このため寺では、補修費用約400万円のうち半分をクラウドファンディングで集めようと計画。クラウドファンディング終了後の9月にふき替え作業を始め、11月に完了を予定している。
延寿寺は春にしだれ桜、秋には紅葉が咲き、季節ごとに美しい景観を誇る。ライトアップや音楽イベントも開催されており、市内外から幅広い年齢層の人たちが訪れているという。横井元昌住職は「延寿寺は人々が集う、地域コミュニティーの場として定着してきた。先人が残してくれたものをこれからも大切に守り、次世代につなげていきたい。生まれ変わる鐘楼のある延寿寺に多くの方に来ていただける日を心待ちにしている」と話す。
支援は8月31日まで、キャンプファイヤーで受け付ける。