女性ボディービルダーとしての経歴を持つ山口世子(ときこ)さんが3月、彦根市内で人力車を走らせる「ひこね亀楽車」(彦根市銀座町)初の女性車夫としてデビューした。
滋賀県唯一のプロ車夫の中村哲也さんが運営する「ひこね亀楽車」。同社の車夫は歴代男性のみだったが、今回初めての女性車夫が誕生した。山口さんは大津市在住の53歳。2020年にメーカーを退職した後、美容と健康の分野で起業し、女性ボディービル選手としての実績を持つ。トレーニングによって、「体が美しく変化する」ボディーメークに魅力を感じ、2016(平成28)年からはボディービルの大会に出場。いくつかの大会で優勝も果たし、2022年の大会を最後にボディービル選手としては区切りをつけたという。
「大会に出なくなってからは、ボディービルに代わる何かに挑戦したいと思っていた。もともと人力車には興味があり、やってみたい気持ちがあった」と山口さんは話す。近郊の人力車を運行する会社を調べ、「それぞれの車夫の個性を生かした接客ができるように感じた」同社に決めたという。山口さんは「53歳という年齢と女性ということが気になり不安もあったが、やってみたい気持ちの方が強くて面接の問い合わせをした」と振り返る。
2月から親方の中村さんに指導を受け、安全や接客について学んできた。人力車を引く時、重さ約80キロの車体に乗客の体重が加わるが、一体となる感覚をつかむと不思議と軽く感じ、スムーズに引けるという。現在は、体力作りの自主トレの他、彦根の歴史についても勉強中で、「とにかく、お客さまとのコミュニケーションが楽しい。先日は『また来るね』の言葉を頂き、とってもうれしかった」と笑顔を見せる。
中村さんは「今まで女性車夫を目指してきた人はいるが、みんな研修で脱落した。山口さんは、当社で初の女性車夫であると同時に、滋賀県で唯一の女性車夫。体力もあり、年齢を感じさせず、車夫としてこれからどんどん伸びていくと確信している」と期待を込める。
山口さんは「人力車に乗ってもらうことで、新たな彦根の魅力を知ってほしい。桜の季節になると特にきれいな彦根城。見応えがあるので、ぜひお越しいただければ」と呼びかける。
乗車料金は、「ちょい乗り」(10分間)=1人1,000円、2人2,000円、「彦根城下散策」「三成散策」(30分間)=同4,000円、同6,000円ほか。