荒神山自然の家(彦根市日夏町)にある「穴窯」で11月22日~26日の5日間、再興湖東焼一志郎窯の「穴窯焼成(あながましょうせい)」が行われた。
煙突の火を確認して薪(まき)をくべる=荒神山自然の家「穴窯」
「再興湖東焼一志郎窯」の陶芸教室で陶芸を学んでいる生徒と陶芸家の中川一志郎さんの作品を「穴窯」で焼き上げる年に一度の行事。普段は工房のガス窯で焼き上げるが、年に一度だけ「穴窯」で昔ながらの手法を用い、5日間、24時間体制で火を絶やさずに焼き上げていく。
窯に50点ほどの作品を並べ、「火入れ」を行った後、「炙(あぶ)り」「焚(た)き込み」などの手順を経て1200度まで窯内部の温度を上げる。煙突から出る火や煙の様子を見て、どれくらいの薪(まき)を入れるかを都度判断し、窯内部を1200度~1250度に温度を上下させる(攻め入り)。その間5分~10分おきに薪をくべ、24時間火を絶やさないように注意を払い続ける。温度を上下させることで循環させた灰を作品に定着させる目的がある。最後に1250度まで温度を上げ(追い込み)、タイミングを見て全てのふたを閉めて焼き上げる。
中川さんと生徒たちは交代で薪をくべ、火を守る。夜中も細心の注意を払い、眠らずに作業を続けた。「穴窯とガス窯では焼き上げた後の色合いが違う。穴窯で焼き上げると、不思議と時代を感じるような色合いになる。人の感覚で焼き上げるのはとても繊細な作業だが、魅力があり、生徒さんにもその感覚を経験してほしい」と中川さんは話す。
同施設職員の入江由紀子さんは「みんなで協力しながら24時間火を守り火の近くで作業するので暑い。顔が灰で真っ黒にもなるが、昔ながらの手法で焼き上げる体験は貴重で面白い。どんな作品が出来上がるかは窯から出してみないと分からないのも面白い」と笑顔を見せる。
窯出しは12月3日で、初めて作品の出来栄えを確認する。